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タクシーの歩合給の仕組みと「足切り」の意味|求人20件で足切り額を書いた求人は0件だった

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求人票に最高歩合率64%とあっても、売上の64%がそのまま給料になるとは限りません。歩合がつき始める手前に、足切りと呼ばれる基準額を置く会社があるからです。

先に結論をお伝えします。転職道.comに載っていたタクシー乗務員の求人20件を数えると、最高歩合率を%で書いた求人は12件で、中央値は63%。一方、足切りの基準額を金額で書いた求人は1件もありませんでした[1]。歩合率は求人票で比べられても、足切りの額は面接で聞くしかありません。

結論:歩合給は運賃収入等×歩率、足切りは歩合がつき始める基準額

  1. 歩合給の基本形:国土交通省のサイトに載っている資料には、運賃収入等に一定の歩率をかける計算式が例として示されています[5]。
  2. 足切り:同じ資料の足切り型の例では、運賃収入等が一定額Aを超えた部分にだけ歩合がかかります。このAが、一般に足切りと呼ばれる基準額です[5][6]。
  3. 求人票の実態:20件のうち足切りの基準額を書いた求人は0件。最高歩合率の記載は12件で、55%から68%までばらついていました[1]。

歩合率が同じでも、足切りの額が違えば手元に残るお金は変わります。会社を比べるときは、歩合率と足切りの額をセットで確かめてください。

国の資料に載っている歩合給の計算式

国土交通省のサイトに掲載された「タクシー運転者に係る賃金規制の概要」には、歩合給と最低賃金の関係を説明するページがあり、そこに歩合給の例が2つ載っています[5]。

表1:国の資料に載っている歩合給の2つの例(出典:国土交通省掲載「タクシー運転者に係る賃金規制の概要」[5])

例の型運賃収入等の条件計算式(資料の表記)
歩率が一定の例条件なし賃金=運賃収入等×歩率(一定)
足切り型の例Aを超えた場合賃金=(運賃収入等-A)×歩合(一定)+固定給
足切り型の例A以下の場合賃金=固定給
タクシーの歩合給 国の資料に載っている歩率が一定の例と足切り型の例の計算式の表

足切り型の例では、Aまでの売上に歩合はつかず、Aを超えた部分だけに歩合がかかります。国土交通省の懇談会の資料も、固定給が中心の賃金体系(A型)を、一定の営業収入(足切り)を上回った部分に歩合率をかけた歩合給が加わる形として説明しています[6]。

Aが高いほど、歩合がつき始めるまでに必要な売上は増えます。同じ懇談会の資料には、足切り額は会社ごとにまちまちだという意見も記録されています[6]。歩合率の高さだけで会社を選ぶと、この基準額を見落としかねません。

タクシー求人20件:歩合と足切りはどう書かれているか

2026年10月7日に、転職道.comの全国検索に載っていたタクシー乗務員の求人から20件を選び、各求人の詳細ページを読みました。件数は先に20件と決めています。地域は東京13件、福岡2件、神奈川・千葉・埼玉・石川・高知が各1件で、東京に偏っています[1]。

表2:歩合給・足切り・給与保証の記載状況(N=20/取得日:2026年10月7日/出典:転職道.com 各求人の詳細ページ[1])

項目件数
最高歩合率を%で記載12
平均賃率だけを記載1
歩合率の%記載なし7
足切りなしと明記4
足切りの基準額を記載0
給与保証の金額と期間を記載14
タクシー求人20件の歩合給・足切り・給与保証の記載状況の棒グラフ

※1つのサイトの掲載分だけを数えたもので、全国の傾向を示すものではありません。記載がないことは制度がないことを意味せず、求人票に書かれていないだけです。求人の本文は転載していません。

足切りについて何か書いていたのは20件中5件です。そのうち4件は足切りなしと明記し、残る1件は売上が一定の水準を超えると歩合給がつく旨を書いていましたが、その水準の金額はありませんでした[1]。足切りがある会社の額は、求人票の外にあると考えたほうがよさそうです。

最高歩合率は55〜68%、中央値63%

%の記載があった12件の最高歩合率は55%から68%で、中央値は63%でした[1]。数え方は次のとおりです。範囲で書かれた率は上限値をとり、公休出勤の率は除きました。手当率・賃金率という表記も歩合率に含め、手当込みとした1件も入れています。

注意したいのは、表記の基準がそろっていない点です。55%以上のように下限だけを示す求人もあれば、同じページの中で64%と65%の両方が出てくる求人もありました[1]。比べるときは、その率が売上全体にかかるのか、足切りを引いた後の額にかかるのか、手当を含むのかを確かめる必要があります。

入社直後は給与保証の期間を置く求人が多い

歩合給に慣れるまでの間、売上に関係なく一定額を払う給与保証を置く求人も目立ちました。金額と期間の両方を書いた求人は20件中14件です。期間を書いた求人のうち3か月が8件で最も多く、金額の中央値は30万円でした(未経験者向けの値を採用)[1]。

保証が終わると、収入は歩合の計算に切り替わります。保証期間の長さより、終わった後にどのくらい受け取っているかのほうが、長く働くうえでは大事な情報です。

面接で聞く3つのこと

表2の結果から、求人票だけでは分からない項目を3つに絞りました。

  1. 足切りの有無と金額:あるなら月いくらか。隔日勤務と日勤で額が変わるか。
  2. 歩合率がかかる対象:売上全体か、足切りを引いた後の額か。表示の率に手当が含まれるか。
  3. 保証期間が終わった後の実績:入社1年目の人が、保証の終了後にどのくらい受け取っているか。

口頭の説明だけで決めず、賃金規程などの書面で確認できるかも聞いておくと安心です。転職サービスの担当者を通して確かめる方法もあります。サービスの選び方はタクシー転職サイトの比較記事で扱っています。

公的資料が定める歩合給のルール

保障給:厚生労働省の学習テキストは、歩合給制度をとる場合、労働時間に応じて固定的給与と合わせて通常の賃金の6割以上が保障されるよう、保障給を定めなければならないと記載しています[3]。このテキストは、2024年(令和6年)4月から適用される改善基準告示を前提に作られています[3]。

累進歩合制度:同じテキストは、トップ賞や奨励加給を含む累進歩合制度について、長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあるとして、廃止しなければならないと記載しています[3]。国土交通省掲載の資料は、累進歩合給を、水揚高等に応じた歩合給の額が非連続的に増減する制度と説明しています[5]。

指導の徹底:厚生労働省は2014年(平成26年)1月24日の通達(基発0124第1号)で、累進歩合制度は1989年(平成元年)3月1日付けの基発第93号により廃止すべきものとして指導してきたと述べ、監督指導の際に採用の有無を必ず確認するよう求めています[2]。

今回の20件には、頑張るほど歩合率が上がると書いた求人が1件ありました[1]。この表現だけでは、資料の定義する累進歩合給に当たるかどうかは判断できません[5]。率が上がる条件と計算方法は、面接で確かめてください。

残業と歩合給:最高裁判所は2020年(令和2年)3月30日の判決(平成30年(受)第908号)で、歩合給の計算で残業手当等に相当する額を差し引く賃金規則について、割増賃金を売上を得るための経費とみて、その全額を乗務員に負担させているに等しいと述べ、原判決を破棄して東京高等裁判所に差し戻しました[4]。個別の賃金規則が適法かどうかは、この記事では判断しません。疑問があれば、労働基準監督署など公的な相談窓口を利用してください。

よくある質問

Q1. 足切りとは何ですか?

歩合給がつき始める売上の基準額です。国土交通省掲載の資料にある足切り型の例では、運賃収入等がAを超えると(運賃収入等-A)×歩合(一定)+固定給、A以下なら固定給だけという計算式が示されています[5]。

Q2. 歩合率が高い会社ほど給料は多くなりますか?

歩合率だけでは決まりません。足切りの額、率がかかる対象、手当を含むかどうかで結果が変わります。今回の20件では足切りの基準額を書いた求人が0件で、求人票だけでは比べられませんでした[1]。

Q3. 足切りなしの求人はありますか?

今回の20件では4件が足切りなしと明記していました[1]。ただし固定給の額や歩合率など、ほかの条件と合わせて見ないと有利かどうかは分かりません。

Q4. 歩合給でも最低限の給料は保障されますか?

厚生労働省の学習テキストは、歩合給制度の場合に通常の賃金の6割以上を保障する保障給を定めるよう記載しています[3]。これとは別に入社直後の給与保証を設ける求人もあり、今回の20件では14件が金額と期間を書いていました[1]。

出典(公式情報)


この記事を書いた人

もと:物流会社で22年、中間管理職を務めた元会社員。求人票の読み方や、手当・シフトの仕組みなど、現場を知る視点からドライバーの職場選びを解説しています。


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まずは「面接で聞く3つのこと」をメモして、気になる会社の足切りの額を確かめましょう。
→ 面接で聞く3つのことへ戻る

求人票に書かれていない足切りの額や保証後の実績は、転職サービスの担当者に確認してもらう方法もあります。
→ ドライバーズワーク 公式サイト

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